採用サイトの社員インタビュー動画を 3 本見た。みんな笑顔で、「風通しがいい」「成長できる」と話している。見終わって、結局どんな職場なのかはよく分からない。
社員インタビュー動画は、会社が出る人を選び、編集して出している広報です。だから、話の中身を信じるかどうかで悩むより、どれだけ具体的か、大変な話があるか、何が映っていないかを見るほうが、職場の実態に近づけます。そして、見て残った疑問を面接で確かめる。この記事は、その見方の話です。
社員インタビュー動画は、会社が選んで作った広報
学生が企業を理解するために参考にしたいものは、「先輩社員の話」が 66.7% で最も多く、人事担当やトップの話を上回っています[3]。社員インタビュー動画は、その「先輩の話」をいちばん手軽に聞ける場所です。
数値を表で見る
| 企業理解を深めるために参考にしたいもの | 割合 |
|---|---|
| 先輩社員の話 | 66.7% |
| 人事担当の話 | 59.9% |
| 第三者の声や評価 | 39.9% |
| トップの話 | 20.9% |
ただ、社員の話を見て入社しても、ずれは起きます。2023・2024 年に就職活動をした 499 人への調査では、入社後に調べていたイメージとのマイナスのギャップを感じた人が 63.1% いました[2]。2026 年 4 月に入社した新入社員への調査(回答 52 人と少なめ)では、ギャップがあったと答えた人が 8 割を超え、いちばん多かったのは仕事内容、次が働き方(残業・休日など)、職場の雰囲気でした[1]。
理由の 1 つは、動画の作られ方にあります。だれに出てもらうか、どの答えを残すかは会社が決めます。給与や労働時間などの求人の情報は、職業安定法で「正確かつ最新」に保ち、虚偽や誤解を生む表示をしないことが求人企業に義務づけられています[4]。一方で、「楽しい職場です」という語り口や、明るい音楽と笑顔の編集までは、数字のようには確かめられません。
だからといって、動画が役に立たないわけではありません。うそを見抜く道具としてではなく、質問を見つける道具として見ると、使いみちがはっきりします。
本音は、話の中身より「どれだけ具体的か」に出る
「風通しがいい」と話す人と、「入社 2 か月目に、出した提案が翌週の会議で採用された」と話す人。言っている中身は近くても、2 人目の話のほうがずっと確かめやすく、作り話にもしにくい。
社員インタビューでよく出る言葉を、具体的に言うとどうなるか、見えなければ何を聞けばよいかに分けると、次のようになります。
| よく出る言葉 | 具体的な話の例 | 話に無ければ聞くこと |
|---|---|---|
| 風通しがいい | 1 年目の提案が、いつ・どこで・どう扱われたか | 若手の提案で変わったことを 1 つ教えてください |
| 成長できる | 半年で任された仕事、独り立ちまでの期間 | 入社 1 年目の終わりには、何を一人でしていますか |
| アットホーム | 困ったときの相談相手、チームの人数と年齢 | 配属先は何人で、最初の相談相手はだれですか |
| メリハリがある | 繁忙期の帰る時間、休みを取る頻度 | いちばん忙しい月は、何時ごろまで働いていますか |
| やりがいがある | うれしかった具体的な場面と、そのときの仕事 | 最近いちばん手応えがあった仕事は何ですか |
見ているあいだは、数字、時期、固有の場面(だれと・どこで・何を)が出てくるかを数えてみてください。1 本の中に 1 つも出てこない動画は、イメージ映像に近いものです。それが悪いわけではありませんが、職場を知る材料としては弱く、右の列の質問がそのまま残ります。
大変な話をしている会社のほうが、信用できる理由
仕事のつらさや、入社前とのギャップを話している社員インタビューは、少し不安になります。でも、職場を見極めるうえでは、こうした場面がいちばんの材料です。
RJP(Realistic Job Preview、現実的な仕事の事前紹介)とは、良い面だけでなく大変な面も含めて、仕事をありのままに応募者へ見せることです。52 の研究、約 17,000 人分をまとめた分析では、RJP が自分から辞める人を減らす主な理由は、「この会社は正直だ」という受け止めが強まることでした[5]。大変さを先に知っていたから耐えられる、というより、隠さなかった会社を信頼できる、ということです。
見る側としては、大変な話の「中身」を見てください。
- 何がどう大変なのかが具体的か(「最初は大変でした」で終わっていないか)
- それを会社やチームがどう支えたか、今も大変なままなのか
- その大変さが、自分にとって受け入れられる種類のものか
初めての会社を辞めた若い人の理由は、労働時間・休日・休暇の条件(28.5%)と人間関係(26.4%)が上位です[8]。働く時間と、一緒に働く人の話が動画にあるか。無いなら、そこが聞くべきところです。
姉妹サイトの企業向けの採用動画の作り方でも、社員インタビューの台本には大変なことを 1 つ入れるよう勧めています。大変な話が出てくるのは、作る側がそれを意図して入れたからでもあります。
画面の端には、話していないことが映っている
話の中身だけでなく、画面に映っているものにも情報があります。テロップ、背景、話す人の立場、公開した日。どれも会社が隠そうとしているものではありませんが、見落としやすいところです。
たとえば、テロップの「入社 8 年目・マネージャー」は、新卒で入った人の 1 年目とは見えている景色が違います。自分が応募する職種と年次に近い人が出ているかを見てください。背景に映る机の上や、ほかの人の数、時計の時刻からも、ふだんの様子がうかがえます。公開から何年もたっている動画なら、出ている人が今もいるとは限りません。
何人か出てくる動画で、全員が同じ言葉(「チームワーク」「挑戦」など)を同じ順番で話すときは、台本の質問が強く決まっていると考えられます。人によって話がばらつくほうが、自然です。
会社の YouTube は、1 本ではなく並びで見る
会社の YouTube チャンネルを開いたら、いちばん再生されている動画より先に、動画の一覧を新しい順に並べてみてください。1 本ずつでは分からないことが、並びに出ます。
- 出ている人の偏り: 営業ばかり、管理職ばかりなど、出てこない職種や年次はないか
- 公開の間隔: 何年も前で止まっていないか。止まっていても悪いとは限らないが、今の職場は別の方法で確かめる
- 説明会の録画: 長い録画があれば、最後の質疑応答を見る。台本の無いやり取りに、話し方や答え方の癖が出やすい
就活系の YouTuber が会社を紹介する動画は、会社がお金を払って作ってもらっていることもあります。YouTube では、お金をもらった宣伝(有料プロモーション)を含む動画は申告が必要で、申告された動画には最初の 10 秒ほどのあいだに、そのことを知らせる表示が出ます[6]。宣伝だから悪いわけではありませんが、会社の公式の動画と同じ「広報」として見てください。
見て残った疑問は、メモにして面接と職場情報で確かめる
動画を見る目的は、志望度を上げることではなく、確かめることを見つけることです。見終わったら、次のひな形に書き出してみてください。
【会社名】 【見た動画】タイトル/公開日
【話していた人】 職種・入社年次(自分と近いか)
1. 具体的だった話(数字・時期・場面)
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2. 大変だと話していたこと
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3. 話に出てこなかったこと
(働く時間/人間関係/1 年目の仕事/評価)
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4. 面接・面談で聞くこと(3 つまで)
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4 番の問いは、面接の逆質問やカジュアル面談でそのまま使えます。「動画で 2 年目の方が繁忙期の話をされていましたが、配属予定の部署でも同じですか」のように、見た動画を挙げて聞くと、よく調べていることも伝わります。
新卒や卒業後まもない人の枠で応募するなら、数字で確かめる方法もあります。新卒者等を対象にした募集では、応募者や応募しようとしている人から求められれば、企業は職場の情報を出すことが若者雇用促進法で義務になっています[7]。過去 3 年の新卒の採用者数と離職者数、月平均の残業時間、有給休暇の平均取得日数などが項目にあり、企業は 3 つの区分からそれぞれ 1 つ以上を出します[7]。動画で気になった点に合わせて、項目の名前を挙げて聞いてください。
何社かを同じ問いで比べたいときは、動画で就職が使えます。「残業や休みは実際どう?」「大変なことは?」のような問いから、働く人がその話をしている場面を探して、その場面から再生できます。同じ問いへの答えを会社ごとに並べて見ると、具体さの差がよく分かります。


