説明会の社員は明るかった。面接官も話しやすかった。「雰囲気が良さそう」と感じて、志望度が上がる。でも、その人たちと同じ部署で働くとは限りません。職場の雰囲気を知る方法を調べ始めるのは、たいていこの小さな引っかかりからです。

私たちの考えは単純です。雰囲気を「なんとなく感じるもの」のままにしておかず、毎日くり返される具体的な場面に分けて確かめる。そうすると、見学でも面談でも動画でも、どこを見ればいいかがはっきりします。

新入社員の 6 割近くが、会社を「社風・職場の雰囲気」で選んでいる

57.9%。東京商工会議所が 2026 年 4 月に新入社員 858 人に聞いた調査で、就職先を決めるときに重視したこととして「社風、職場の雰囲気」を選んだ人の割合です[1]。給与などの処遇面(53.1%)より多く、前の年度(58.8%)に続いて 1 位でした[1]。

社風・職場の雰囲気 57.9% 給与などの処遇 53.1% 事業の内容 44.3% 福利厚生 40.4% 働き方(残業・休暇) 40.2% 新入社員 n=858(複数回答、上位 5 項目)
就職先を決めるときに重視したことは「社風・職場の雰囲気」が最多(東京商工会議所「2026年度 新入社員意識調査」[1])
数値を表で見る
重視したこと割合
社風、職場の雰囲気57.9%
処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)53.1%
就職先の会社の事業内容44.3%
福利厚生40.4%
働き方改革、ワーク・ライフ・バランス(年休取得状況、時間外労働の状況など)40.2%

同じ調査で、社会人生活の不安に「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」を挙げた人は 44.3% でした[1]。雰囲気で選んだのに、そこでうまくやれるかは分からないまま入社している人が多い、ということです。

給与や休日は数字で比べられます。雰囲気は、いちばん重視されているのに、いちばん確かめ方があいまいなまま残っている項目です。

早く辞めた人ほど、理由に人間関係を挙げている

「雰囲気なんて入ってみないと分からない」とよく言われます。それはその通りなのですが、合わないと分かるのは、思っているより早い時期です。

厚生労働省の調査で、初めての会社を辞めた 15〜34 歳に理由を 3 つまで選んでもらうと、「人間関係がよくなかった」は 26.4% で、労働時間・休日・休暇の条件(28.5%)に次ぐ 2 位でした[2]。これを勤めた期間ごとに分けると、様子が変わります。

3 か月未満 52.3% 3〜6 か月 40.1% 6 か月〜1 年 37.4% 1〜2 年 25.1% 2〜3 年 23.1% 勤続期間別(3 つまで回答)。全体では 26.4%
初めての会社を辞めた理由に「人間関係がよくなかった」を挙げた割合。1 年未満で辞めた人ほど高い(厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」[2])
数値を表で見る
初めての会社での勤続期間「人間関係がよくなかった」
3 か月未満52.3%
3 か月〜6 か月未満40.1%
6 か月〜1 年未満37.4%
1 年〜2 年未満25.1%
2 年〜3 年未満23.1%
全体26.4%

3 か月もたずに辞めた人の半分以上が、人間関係を理由に挙げています[2]。1 年未満で辞めた人では、人間関係が理由の 1 位です[2]。

人との相性には運もあり、入る前に全部を防げるわけではありません。それでも、どんな人がどんな距離感で働いているかは、入る前に見られる部分がかなりあります。第二新卒の転職で同じミスマッチを繰り返さないための準備でも、この「人」の確かめ方がいちばん抜けやすいところです。

職場の雰囲気とは、毎日くり返される 4 つの場面のこと

職場の雰囲気とは、そこで働く人どうしの話し方や距離の取り方、仕事の進め方から生まれる、毎日の空気のことです。よく似た言葉の社風は、会社全体で共有されている価値観やふるまい方を指します。

違いは単位です。社風は会社ごと、雰囲気は部署やチームごとに決まります。同じ会社でも、本社と営業所、店長の違う 2 つの店では、空気がまったく違うことがあります。だから確かめる相手は「会社」より「配属される場所」です。

そのうえで、雰囲気を次の 4 つの場面に分けて見ることをすすめます。どれも、見学や面談で目に入るサインと、質問で聞ける出来事があります。

職場の雰囲気を 4 つの場面に分ける
場面見えるサイン聞き方の例
人との距離あいさつが返ってくるか。席を立って相談しに行く人がいるか。雑談の量「分からないことがあるとき、1 年目の方はだれに、どうやって聞いていますか」
困ったとき・失敗したときミスの話を責め口調でなくできているか。助けを求める声に周りが反応するか「最近、だれかが仕事で困っていたとき、チームではどう対応しましたか」
仕事のリズム静かか、にぎやかか。電話やチャットの多さ。夕方に人がどれくらい残っているか「忙しい時期と落ち着いた時期で、帰る時間はどれくらい違いますか」
物事の決め方打ち合わせで若手が発言しているか。上の人が一人で決めているか「最近変わった仕事の進め方は、だれがどうやって決めましたか」

4 つのどれにも、正解の「良い雰囲気」はありません。静かに集中できる職場が合う人もいれば、声をかけ合いながら進める職場が合う人もいます。ここで分けたのは、良し悪しを判定するためではなく、自分に合うかを比べられるようにするためです。

職場の雰囲気を知る方法は、場所ごとに見えるものが違う

採用サイト、説明会、職場見学、社員との面談、インターンシップ、口コミ。どれも雰囲気の一部しか見せてくれません。それぞれで見えるものと見えにくいものを知っておくと、1 回の印象で決めずに済みます。

確かめる場所ごとに、見えるもの・見えにくいもの
場所見えるもの見えにくいもの
採用サイト・説明会会社が大事にしている言葉。話す社員の表情会社が選んで出した人と場面。配属先のふだんの様子
働く人の動画話し方、言葉に詰まる間、仕事の大変さの語り方撮影していない時間
職場見学・オフィス訪問人どうしの距離、音、席の並び見学に合わせて整えた時間帯。忙しい時期
社員との面談・OB/OG 訪問一人の本音に近い話。質問への答え方その人の部署の外のこと
インターンシップ一緒に働いたときの教え方、フィードバックのしかた期間の短さ。学生向けに配慮された部分
口コミサイト辞めた人・不満のある人から見た職場書かれた時期と部署。満足している人の声

おすすめは、前の章の 4 つの場面から 1 つ選び、それを 2 か所以上で確かめることです。たとえば「困ったときの頼り方」を、見学で目で見て、面談で出来事として聞く。2 か所で同じ話が出てくれば、かなり信じてよい情報になります。

インターンシップは、雰囲気を確かめる場としていちばん長く職場にいられます。国の考え方では、インターンシップと呼べるのは、汎用的能力活用型なら 5 日以上で、期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充て、職場の社員が指導してフィードバックするものです[3]。募集要項には、受け入れる職場の情報も書くことになっています[3]。1 日の説明会型のプログラムとは、見えるものが違います。

雰囲気そのものは数字になりませんが、裏づけになる数字はあります。新卒者等を対象にした募集なら、応募した人などから求められた企業は、過去 3 年の新卒の採用者数と離職者数、研修やメンター制度の有無、前年度の月平均の残業時間などの区分から、それぞれ 1 つ以上を出すことが義務になっています[4]。数字の読み方は求人票と公的データで入る前に確かめる方法にまとめています。

職場見学では、人と人のあいだを見る

見学では、案内してくれる社員より、その周りを見てください。すれ違った人があいさつを返すか。案内の人が質問に詰まったとき、近くの人が自然に加わるか。電話の声や話し声はどれくらいか。案内役は会社が選んだ人ですが、周りの人のふるまいはふだんのままのことが多いからです。

時間帯を選べるなら、夕方を頼んでみてください。朝や昼より、その日の忙しさと帰る時間が見えます。面接で会社を訪ねたときの受付や待ち時間も、同じように見られる場面です。

東京商工会議所の調査では、内定から入社までに会社主催の職場見学があったと答えた新入社員は 16.3% でした[1]。待っていても見学の機会が来るとは限らないので、選考の途中で「配属予定の職場を一度見せていただくことはできますか」とお願いしてかまいません。

見学で見たものの扱い

許可なく写真を撮らないでください。画面や書類に写っていたお客様の名前・社内の数字は、SNS や口コミに書かないでください。

口コミは「いつ・どこの・だれの声か」で読む

口コミサイトは、会社が見せない面を知る数少ない手段です。ただ、書く人の多くは、何かを言いたくなる出来事があった人だと私たちは考えています。読むときは、投稿した時期(3 年前なら上司も方針も変わっているかもしれません)、部署と職種、同じことを別の人も書いているかの 3 つを見てください。気になる書き込みは、そのまま信じるのも無視するのもやめて、面談で場面の質問として聞き直すと確かめられます。

働く人の動画で、話し方と大変なことを見る

動画は、文字では伝わらない話し方や表情が見えます。注目してほしいのは、仕事の大変なことを聞かれたときの答え方です。具体的な出来事を挙げて話せる職場と、「特にありません」で終わる職場では、入ってからのずれ方が違います。動画で就職では「どんな人が働いてる?」「大変なことは?」といった問いから、働く人がその話をしている場面を探して再生できます。

「雰囲気はどうですか」と聞かずに、場面を聞く

面接やカジュアル面談で「職場の雰囲気はどうですか」と聞くと、返ってくるのはたいてい「風通しがいいですよ」「アットホームです」です。うそではなくても、ほかの会社と比べられる情報になりません。

聞くときは、場面を 1 つ決めて、最近の出来事を聞いてください。言い換えの例です。

  • 「雰囲気はいいですか」→「配属予定のチームで、最近うれしかったことと大変だったことを 1 つずつ教えてください」
  • 「風通しはいいですか」→「若手の提案で仕事のやり方が変わったことはありますか。どんな提案でしたか」
  • 「人間関係はどうですか」→「1 年目の方は、仕事の相談をだれにしていますか。決まった相談相手はいますか」
  • 「残業は多いですか」→「昨日、チームの方は何時ごろに帰られましたか」

見るのは答えの良し悪しより、答えに具体的な出来事が出てくるかです。人の名前や日にちが浮かぶように話せるなら、その職場ではそれが本当に起きています。逆質問の組み立て方を含めて、面接で聞ける質問はほかにもありますが、雰囲気についてはこの形だけ覚えておけば足ります。

良い雰囲気より、自分に合う雰囲気を先に決めておく

「アットホームな職場」がうれしい人もいれば、仕事と私生活をはっきり分けたい人もいます。自分の基準が無いまま見学に行くと、案内の人の感じの良さで判断してしまいがちです。見学や面談の前に、これまで居心地がよかった場所と、しんどかった場所を思い出して書き出してみてください。アルバイト先、ゼミ、サークル、部活、前の職場、どれでもかまいません。

【居心地がよかった場所】
どこで:
分からないことは、だれに・どう聞けた:
失敗したとき、周りはどうしてくれた:
話し声の量(静か / ほどほど / にぎやか):
物事はだれが決めていた:

【しんどかった場所】
(同じ 5 つを書く)

【次の見学・面談で確かめたいこと】
1.
2.
3.

書き出した違いが、そのまま確かめる項目になります。たとえば「質問しにくくてしんどかった」なら、見学で見るのは相談しに行く人の姿、面談で聞くのは 1 年目の相談相手です。

確かめた中身は、志望動機にも使えます。「職場の雰囲気が良いと感じた」だけでは、どの会社にも書けてしまいます。見たこと・聞いたことを 1 つ入れ、その環境で何をしたいかまで書くと、自分の言葉になります。

職場見学で、1 年目の方が先輩の席まで行って相談し、先輩が手を止めて一緒に画面を見ている場面を何度も見かけました。分からないことをその場で聞ける環境で早く仕事を覚え、2 年目にはお客様への提案を任されるようになりたいと考えています。

例: 職場見学で見たことを志望動機に使う場合