面接の終わりに「最後に、何か質問はありますか」と聞かれる。逆質問の時間です。ここを「意欲を見せる場」としてだけ使うのは、少しもったいないと私たちは考えています。
働いている人に、働き方を直接聞ける機会は、選考の中でもそう多くありません。この記事は、その数分を職場の実態を確かめるために使う聞き方と、返ってきた答えの読み方に絞りました。
面接の逆質問は、入ってからのずれを減らせる数少ない時間
入社してから「思っていたのと違った」と感じる人は、珍しくありません。39 歳以下の 929 人に聞いたエン・ジャパンの調査では、87% が入社後にギャップを感じた経験があり、悪い方のギャップでいちばん多かったのは仕事内容(39%)と職場の雰囲気(38%)でした[2]。同じ調査で「入社前にもっと確かめておけばよかったもの」の 1 位は、社員との面談(39%)です[2]。
初めての会社を辞めた理由を見ても、上位は労働時間・休日・休暇(28.5%)と人間関係(26.4%)で、仕事が自分に合わない(21.7%)が続きます[3]。どれも求人票の文字だけでは分かりにくく、働いている人に聞けば手がかりが得られるものです。
聞きたいことは、学生の側でもはっきりしています。学情が 2026 年 3 月卒業予定の学生などに聞いた調査では、逆質問で聞きたいことの 1 位は「働く環境に関すること」でした[1]。
数値を表で見る
| 逆質問で質問したいこと | 割合 |
|---|---|
| 働く環境に関すること | 44.7% |
| どのような社員が活躍しているか | 37.2% |
| 新入社員・若手社員に期待すること | 34.6% |
| 福利厚生に関すること | 28.6% |
| 面接官が思う会社の良いところ | 28.5% |
| 面接官が思う会社の課題 | 21.1% |
知りたいことは決まっている。難しいのは聞き方のほうです。「職場の雰囲気はどうですか」と聞けば、たいてい「風通しはいいですよ」と返ってきて、それ以上は分かりません。
「どうですか」より「最近あったこと」を聞くと、答えに実態が出る
意見を聞く質問には、だれでも感じのいい言葉で答えられます。出来事を聞く質問には、出来事で答えるしかありません。逆質問で実態に近づくには、聞き方を少しずらします。
| 知りたいこと | 実態が出にくい聞き方 | 実態が出やすい聞き方 |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | どんな仕事をしますか | 入社 1 年目の方が、先週担当していた仕事を教えていただけますか |
| 残業 | 残業は多いですか | 最近いちばん忙しかった月は、チームの皆さんは何時ごろ帰っていましたか |
| 雰囲気 | 職場の雰囲気はどうですか | 最近、チームで意見が分かれたとき、どうやって決めましたか |
| 育て方 | 研修は充実していますか | 最近入った方は、最初の 1 か月をどう過ごしましたか |
| 定着 | 離職率は高いですか | 過去 3 年の新卒の採用数と、そのうち辞めた方の数を教えていただけますか |
右の列でしていることは 3 つです。意見ではなく出来事を聞く。平均ではなく最近の 1 回を聞く。会社全体ではなく、配属先のチームのことを聞く。「はい・いいえ」で答えられる形も避けます。「残業は多いですか」には「そんなに多くないですよ」で答えが終わってしまうからです。
聞く側が気まずく感じるかもしれませんが、具体的な質問は、聞かれる側にとっても答えやすいものです。よく調べてきたことも伝わります。
なお、会社のサイトや求人票を読めば分かることは、面接で聞かなくて済みます。求人票や公的なデータで先に確かめられることはブラック企業の見分け方にまとめました。そこで残った疑問が、面接でしか聞けない逆質問になります。
職場の実態を確かめる逆質問の例 30
テーマごとに 5 つずつ並べました。全部を聞く必要はありません。自分がいちばん不安なテーマから 3〜5 個を選び、言葉は自分のものに直して使ってください。
仕事の中身
- 入社 1 年目の方が、先週担当していた仕事を教えていただけますか
- 1 日のうち、人と話す時間と、一人で作業する時間は、おおよそどのくらいの割合ですか
- 求人票にある業務のうち、最初の 3 か月で任されるのはどれですか
- 若手の方が「入る前に思っていたのと違った」とよく言うのは、どんなところですか
- この 1 年で、仕事の進め方がいちばん変わったことは何ですか
答えでは、作業の名前や具体的な場面が出てくるかを見ます。「幅広く」「お客様のために」のような言葉だけで終わるなら、「たとえば先週だと?」と一言足してみてください。
残業・休み
- 最近いちばん忙しかった月は、チームの皆さんは何時ごろ帰っていましたか
- 忙しい時期は 1 年のうちいつごろで、どのくらい続きますか
- 急に休まなければならなくなったとき、仕事はどう引き継いでいますか
- この 1 年で、連休を取った若手の方はいますか
- 残業をするときは、どんな流れで申請していますか
「何月ごろ」「何時ごろ」と幅で返ってくれば、実際の様子を知っている人の答えです。「人によります」で止まったら、「配属先のチームだとどうですか」と範囲を絞ると答えやすくなります。
一緒に働く人と雰囲気
- 配属先は何人のチームで、年齢や入社年数はどんな顔ぶれですか
- 最近、チームで意見が分かれたとき、どうやって決めましたか
- 新人の方がつまずいたとき、周りはどう声をかけていますか
- 今、チームで困っていることや、変えたいと思っていることは何ですか
- 面接官の方ご自身が、入社してから意外だったことは何ですか
「仲がいいです」「風通しがいいです」のあとに、場面が続くかどうか。困っていることを聞かれて率直に話してくれる会社は、入ってからのずれも小さくなりやすいと私たちは考えています。
育て方と、独り立ちまで
- 最近入った方は、最初の 1 か月をどう過ごしましたか
- 一人で仕事を任されるまでに、だいたいどのくらいかかっていますか
- 教える担当の方は決まっていますか。その方は、自分の仕事と教えることをどう両立していますか
- 入社 2〜3 年目の方は、今どんな仕事を任されていますか
- 研修のあと、現場で最初に戸惑う人が多いのはどんなところですか
期間と担当がはっきりしていれば、入ってからの数か月を想像しやすくなります。「現場で覚えてもらいます」だけなら、だれが、どのくらいの期間教えるのかを聞き直してください。
配属・異動・評価
- 新卒(中途)の配属は、いつ、どんなことをもとに決まりますか
- 求人票にある勤務地や業務の「変更の範囲」のうち、実際に異動した例はどのくらいありますか
- 希望を出して異動した方の例はありますか
- 評価の面談は年に何回、どなたとしていますか
- 入社 3 年目くらいで評価が高い方は、どんなところが評価されていますか
いつ、だれが、何をもとに決めるのか。流れを説明してもらえれば、入社後に希望を伝える場面も想像できます。
辞める人と、長く働く人
- 過去 3 年の新卒の採用数と、そのうち辞めた方の数を教えていただけますか
- 辞めた方がいたとき、理由としてどんな声が多かったですか
- 人が辞めたあと、チームで何か変えたことはありますか
- 長く働いている方は、この会社のどんなところを理由に挙げますか
- 入社した人が最初の 1 年で辞めないように、会社として気をつけていることはありますか
数字を出してくれるか、辞めた理由をすべて本人のせいにしていないかを見ます。辞める人がいること自体は、どの会社にもあります。そのあと何を変えたかのほうが、職場について多くを教えてくれます。
一次面接・二次面接・最終面接で、聞く相手と聞くことを変える
同じ質問でも、相手によって答えの具体さが変わります。配属先の毎日の様子は人事より現場の人のほうが詳しく、会社がこれから向かう先は役員のほうが詳しい。面接の段階ごとに、相手が答えやすいことを聞くと、短い時間でも多くが分かります。
| 段階 | 相手になりやすい人 | 向いている質問 |
|---|---|---|
| 一次面接 | 人事・採用担当 | 制度と数字。配属の決まり方、研修の流れ、新卒の採用数と辞めた方の数、評価の面談 |
| 二次面接 | 配属先の上司・現場の社員 | 毎日の仕事と人。1 年目の仕事、忙しい時期、チームの顔ぶれ、困っていること |
| 最終面接 | 役員・社長 | 会社の向かう先と若手への期待。これから力を入れる仕事、若手に任せたいこと、長く働く人の理由 |
前の面接で聞いた答えを、次の面接で別の人に聞いてみるのも手です。「一次面接で、忙しい時期は 3 月ごろと伺いました。現場ではどう感じていますか」と聞けば、同じことを別の立場から確かめられます。
残業や離職のことは、逆質問で聞いてもいい?
聞いてかまいません。ただ、条件のことだけを続けて聞くと、仕事より待遇に関心があるように受け取られることはあります。理由を一言添えると、聞きやすくなります。
長く働きたいと考えているので、確かめておきたいのですが、最近いちばん忙しかった月は、チームの皆さんは何時ごろ帰っていましたか。
例: 残業について聞くとき
数字で知りたいことは、面接の場で無理に聞き出さなくても、別の道があります。
新卒の枠なら、職場の情報を求められる
新卒者等を対象にした募集では、応募した人や応募しようとしている人から求められれば、企業は職場の情報を出すことが若者雇用促進法で義務になっています。過去 3 年の新卒の採用者数と離職者数、研修の内容、前年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数などが項目にあり、3 つの区分からそれぞれ 1 つ以上を出します[4]。新卒者等には、その募集の対象になっている既卒の人も含まれます[4]。
求めるときは、氏名、連絡先、学校名と卒業(見込み)の年月、情報がほしいことを企業に伝えます。面接のように本人だと確かめられる場なら、口頭でもかまいません。企業からはメールか書面で返ってくるのが基本です[4]。そして、情報を求めたことを理由に、企業は応募者を不利に扱ってはならないと決められています[4]。面接の場で聞きにくければ、あとからメールで「若者雇用促進法にもとづく職場情報の提供をお願いします」と、知りたい項目を挙げて頼めます。
配属と転勤は、求人票の「変更の範囲」から聞く
2024 年 4 月から、企業が人を募集するときには、従事する業務と働く場所の「変更の範囲」も示すことになりました[5]。変更の範囲とは、将来の配置転換などで変わる可能性がある業務と場所の範囲のことです[6]。
求人票に「会社の定める営業所」のように広く書かれていたら、それは「どこへでも行く可能性がある」という意味です。実際にどのくらいの人が、どこへ異動しているのかを聞くと、転勤の現実が見えてきます。給与や手当の細かいところは、内定の前後に条件を示される場で、書面を見ながら確かめるほうが落ち着いて聞けます。
答えは、具体さと食い違いで読む
逆質問は、聞いて終わりではありません。返ってきた答えの中身と同じくらい、答え方に職場が出ます。
まず、具体的かどうか。場面、数字、時期、人の名前の代わりになる役割(「隣の席の先輩が」)が出てくれば、その人はその職場を実際に見て話しています。抽象的な言葉だけなら、「たとえば、最近だとどんなことがありましたか」と一言足してみてください。それでも具体的な話が出てこなければ、そこは別の方法で確かめたいところです。
次に、食い違い。人事と現場の人で、忙しさや配属の話が大きく違うことがあります。どちらかがうそをついているとは限らず、見えている範囲が違うだけのこともあります。食い違いに気づいたら、次の面接や、社員と話せる面談で聞き直します。
面接が終わったら、聞いた答えをすぐに 3 行ほどメモしておくと、何社か受けたあとで比べられます。
面接の前に、働いている人が自分の言葉で話している動画を見ておくのも役に立ちます。大変なことを話している場面を見ておけば、「動画で、忙しい時期の話をされていましたが、それは 1 年のうちどのくらい続きますか」と、一歩深い逆質問ができます。動画で就職では、「残業は実際どう?」のような知りたいことから、働く人が答えている場面を探して見られます。
採用する側にも、良い面だけでなく大変な面も先に見せたほうが、入社後のずれが減るという考え方があります。企業がどんな情報をどう出そうとしているかは、姉妹サイトの大変なことも先に伝える採用の考え方(RJP)で読めます。逆質問の答えを読むときの参考にもなります。
求人票と会社の動画から、自分の逆質問を AI と作る
例を並べても、自分の不安に合う質問は人によって違います。ChatGPT や Claude に、求人票と、説明会や社員の動画を見て気になったことを渡すと、自分用の逆質問を作る手伝いをしてもらえます。
あなたは就職・転職の面接の準備を手伝う相談相手です。
下に、応募先の求人票の文章と、
会社の説明会や社員の動画を見て
私が気になったことのメモを貼ります。
次のルールで、面接の逆質問を作ってください。
・最初に、私がいちばん不安なことを
1 つだけ質問してください。答えてから作る
・求人票や会社のサイトを読めば分かることは除く
・「はい・いいえ」で答えられる形にしない
・意見ではなく、最近あった具体的な出来事を聞く
・会社全体ではなく、配属先のチームのことを聞く
・質問は 10 個。それぞれに
「答えで確かめたいこと」を 1 行で付ける
・一次面接(人事)、二次面接(現場)、
最終面接(役員)のどれに向くかも書く
【求人票】
(求人票の文章を貼り付ける)
【気になったことのメモ】
(気になったことを箇条書きで)
出てきた質問は、そのまま読むのではなく、自分の言葉に直してから使ってください。面接で受け取った社外に出せない資料や、面接官の名前は入力しないでください。AI を就活のほかの場面で使うときの注意は、就活 AI の使い方とプロンプト集にあります。


