ブラック企業の見分け方は、「雰囲気」や「うわさ」より、求人票・公的なデータ・面接・働く人の声の 4 か所で、同じことを確かめるのがいちばん確かです。この記事では、新卒の就活でも転職でも使える確かめ方を、法律や厚生労働省の資料を根拠に順番にまとめました。最後に、そのまま使えるチェックリストも付けています。

「入ってみないと分からない」と思われがちですが、入る前に分かることは意外に多くあります。全部を一度にやる必要はありません。気になる会社が出てきたら、できるところから試してみてください。

ブラック企業とは? 見分け方の前に知っておきたい基準

ブラック企業という言葉に、法律で決まった定義はありません。そのため「残業が多い=ブラック」のように 1 つの点だけで決めると、良い会社を候補から外してしまうこともあります。

この記事では、次の 2 つの問いで見ることをおすすめします。

法律を守っているか
残業時間の上限、残業代の支払い、求人で労働条件を正しく示すことなど、決まりを守っているかどうか。
人を育てて、長く働けるようにしているか
新しく入った人が辞めずに続けられているか、研修や相談の仕組みがあるか、休みが取れているかどうか。

たとえば残業時間には、法律で上限があります。原則は月 45 時間・年 360 時間で、臨時的な特別の事情が無ければ、これを超えることはできません[6]。特別な事情で労使が合意した場合でも、年 720 時間以内、月 100 時間未満(休日労働を含む)などの上限があります[6]。こうした「線」を知っておくと、求人票や面接で聞いた数字を落ち着いて判断できます。

ブラック企業の見分け方 ①求人票で確かめる 6 つの欄

求人票では、書くように決められている項目が、ちゃんと書かれているかを見ます。決まりがあるのに抜けている・ぼかしている欄は、面接で確かめたいポイントです。

固定残業代は「3 点セット」で書かれているか

固定残業代とは、一定時間分の残業代を、残業してもしなくても毎月決まった額で払う仕組みのことです。仕組みそのものは違法ではありませんが、書き方には決まりがあります。

厚生労働省は、固定残業代を採用する場合、募集要項や求人票に次の 3 つをすべて書くよう求めています[2]。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額

    「月給 25 万円(固定残業代含む)」だけでは、基本給がいくらか分かりません。

  2. 固定残業代の時間数と金額

    例:「業務手当(時間外労働の有無にかかわらず、20 時間分の時間外手当として 3 万円を支給)」。

  3. その時間を超えた分は追加で払うこと

    例:「20 時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」。

求人票の賃金欄の比較。左は「月給25万円(固定残業代を含む)」だけの足りない書き方。右は基本給22万円、業務手当3万円(20時間分の時間外手当)、20時間を超えた分は追加で支給、の3点がそろった書き方
図 1: 固定残業代の 3 点がそろった書き方の例(金額は例。厚生労働省のリーフレットの記載例[2]をもとに作成)

同じリーフレットでは、ハローワークに寄せられた「求人票と実際が違う」という申し出のうち、いちばん多いのが賃金(固定残業代を含む)に関するものだったと紹介されています(平成 27 年度の厚生労働省の調べ)[2]。給与の欄は、特にていねいに読む価値があります。

ポイント

固定残業の時間数が多いときは、その時間に近い残業がふだんからあるのかを確かめます。月 45 時間が原則の上限[6]なので、それに近い時間が設定されていれば、面接で「実際の平均の残業時間」を聞いてみてください。

2024 年 4 月から増えた「変更の範囲」

2024 年 4 月から、求人で示さなければならない労働条件に、仕事の内容と働く場所の「変更の範囲」が加わりました[3]。「変更の範囲」とは、入社直後だけでなく、将来の配置転換などの見込みも含めた範囲のことです[3]。

たとえば「就業場所:(雇入れ直後)東京本社 (変更の範囲)全国の支社」とあれば、転勤の可能性があると分かります。転勤や職種の変更が困る人は、ここを最初に見ておくと、あとで慌てずに済みます。

求人票の言葉より、数字と条件を見る

「アットホーム」「やりがい」「若手が活躍」といった言葉は、良い会社も使います。言葉だけで決めつけず、その言葉を裏づける数字や条件が書かれているかを見るほうが確かです。

求人票で見る 6 つの欄と、確かめたいこと
欄見るポイント気になるときに確かめること
賃金基本給と固定残業代が分けて書かれているか固定残業の時間数と、超えた分の支払い
時間外労働「あり(月平均 15 時間)」のように数字があるか繁忙期の残業、部署による差
休日年間休日の日数、週休 2 日か完全週休 2 日か休日出勤の有無と代休の取り方
業務内容・就業場所入社直後と「変更の範囲」の両方があるか転勤・異動の頻度、本人の希望の聞き方
試用期間期間と、その間の条件が書かれているか試用期間中の給与や待遇の違い
募集の状況同じ職種をいつも大人数で募集していないか募集の理由(増員か、欠員か)

いつも求人を出していること自体は、事業が伸びている会社にもよくあります。気になったら「今回の募集は増員ですか、欠員の補充ですか」と理由を聞くと、様子が分かります。

公的なデータで確かめる方法(しょくばらぼ・青少年雇用情報・公表事案)

会社が自分で出す情報に加えて、国の仕組みを使って数字を確かめることができます。無料で、だれでも使えます。

新卒・既卒は「職場情報」を会社に求められる

若者雇用促進法には、新卒者などが応募しようとする会社に、職場の情報を求められる仕組みがあります[4]。対象は在学中で卒業見込みの人や、卒業した人などです。応募した人や応募しようとしている人が、メール・書面などで求めた場合、会社は情報を出す義務があります[4]。

出してもらえる情報は、次の 3 つの種類です[4]。

  • 募集・採用の状況: 直近 3 事業年度の新卒採用者数・離職者数、平均勤続年数など
  • 能力を伸ばす取り組み: 研修の有無と内容、メンター制度、キャリアコンサルティングの制度など
  • 長く働ける取り組み: 所定外労働時間(残業)、有給休暇の取得日数、育児休業の取得状況など

ただし、求められたときに会社が出す義務があるのは、3 つの種類それぞれについて 1 つ以上です[10]。すべての項目が出てくるとは限らないので、知りたい項目を具体的に書いて頼むのがコツです。聞き方の例は次のとおりです。

件名: 職場情報のご提供のお願い(【大学名】 【氏名】)

【会社名】 採用ご担当者様

【大学名】【学部名】の【氏名】と申します。
貴社の【職種】の募集に応募を考えております。
若者雇用促進法に基づく職場情報のうち、
・直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数
・前年度の月平均所定外労働時間
・前年度の有給休暇の平均取得日数
を教えていただくことはできますでしょうか。

お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。

法律に基づくお願いなので、聞いたこと自体が不利になる理由はありません。それでも気になる人は、まず次の「しょくばらぼ」で公開済みの数字を見てから、足りない分だけを聞くとよいでしょう。

しょくばらぼで残業や有給を比べる

しょくばらぼは、厚生労働省が運営する「職場情報総合サイト」です。働き方や採用の状況など、企業の職場情報を検索して比べられます[5]。気になる会社の名前で検索し、残業時間や有給休暇の取得、女性の活躍などの数字が載っていないかを見てみましょう。

載っていないからといってブラックとは限りません。載っている会社は、情報を出すことに前向きな会社だと考えると使いやすくなります。

ユースエール認定と、法令違反の公表事案

ユースエール認定は、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理が優良な中小企業(常時雇用する労働者が 300 人以下)を、厚生労働大臣が認定する制度です[7]。認定には、直近 3 事業年度の新卒者などの離職率が 20% 以下、前年度の月平均の所定外労働時間が 20 時間以下、有給休暇の取得率が平均 70% 以上(または年 10 日以上)といった基準があります[7]。中小企業を見るときの、ひとつの目安になります。

反対に、厚生労働省と都道府県の労働局は、労働基準関係の法令に違反して書類送検された事案などを、企業名とともに公表しています[8]。応募先の名前が載っていないかを確かめておくと安心です。載っていた場合も、いつの・どんな違反かを読み、その後の改善を面接などで確かめましょう。

離職率はどう読む? 数字の見方と注意

離職率は、同じ規模・同じ業種の平均と比べて読むのがコツです。会社の規模や業種によって、もともとの水準が大きく違うからです。

厚生労働省が 2025 年 10 月に公表した最新の調査では、2022 年 3 月に大学を卒業して就職した人のうち、3 年以内に辞めた人は 33.8% でした[1]。規模別に見ると、小さい事業所ほど高くなっています。

5 人未満 57.5% 5〜29 人 52.0% 30〜99 人 41.9% 100〜499 人 33.9% 500〜999 人 31.5% 1,000 人以上 27.0% 大卒全体 33.8% 2022 年 3 月卒の大卒、就職後 3 年以内
図 2: 大卒の 3 年以内離職率は、事業所が小さいほど高い(出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」2025 年 10 月公表[1])
数値を表で見る
事業所の規模3 年以内離職率
5 人未満57.5%
5〜29 人52.0%
30〜99 人41.9%
100〜499 人33.9%
500〜999 人31.5%
1,000 人以上27.0%
大卒全体33.8%

業種による差も大きく、大卒では宿泊業・飲食サービス業が 55.4% といちばん高くなっています[1]。

宿泊・飲食 55.4% 生活関連・娯楽 54.7% 教育・学習支援 44.2% 医療・福祉 40.8% 小売 40.4% 大卒全体 33.8%
図 3: 離職率の高い上位 5 業種と大卒全体(出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」[1])
数値を表で見る
業種3 年以内離職率(大卒)
宿泊業,飲食サービス業55.4%
生活関連サービス業,娯楽業54.7%
教育,学習支援業44.2%
医療,福祉40.8%
小売業40.4%
大卒全体33.8%

このため、たとえば従業員 20 人の飲食の会社の離職率を、大企業の平均と比べても、正しい判断はできません。同じ規模・同じ業種の平均より明らかに高いかを見て、高ければ「辞めた人はどんな理由が多いですか」と聞いてみましょう。理由をきちんと説明でき、手を打っている会社なら、数字だけで外す必要はありません。

面接・説明会で確かめる逆質問の例

面接の逆質問は、職場の実態を確かめる絶好の機会です。「残業は多いですか?」より、具体的な場面を聞くほうが、答えに実態が出やすく、聞かれる側も答えやすくなります。

確かめたいことと、角の立たない聞き方の例
確かめたいこと聞き方の例
残業「配属先のチームでは、繁忙期と落ち着いている時期で、帰る時間はどのくらい違いますか」
休み「入社 1〜2 年目の方は、有給休暇をどんなときに取っていますか」
育て方「入社してから一人で仕事を任されるまで、どんな流れで教えていただけますか」
人間関係「困ったとき、新人はふだんだれに相談していることが多いですか」
定着「この 3 年で入社した方は、今どんな仕事をしていますか」
評価「評価や昇給は、どんな場で、どんな基準で決まりますか」

答えの中身と同じくらい、答え方も手がかりになります。具体的な例を交えて話してくれるか、はぐらかすか、質問したことを嫌がる様子がないかを見てみてください。面接官によって答えが大きく食い違うときも、もう一度確かめたいサインです。

補足

説明会や面接で聞きにくいことは、OB・OG 訪問やカジュアル面談で聞くと、ふだんの言葉で答えてもらいやすくなります。

働く人の動画で「職場の雰囲気」を確かめる

職場の雰囲気は、文字ではいちばん伝わりにくいものです。だからこそ、実際に働いている人が話している動画は、確かめる手段として役に立ちます。

見るときは、次の 3 つを意識すると、宣伝として作られた動画からも実態を読み取りやすくなります。

  1. 具体的な話があるか

    「みんな仲が良いです」より、「先週こんなことがあって」のような具体的な場面が話されているかを見ます。

  2. 大変なことも話しているか

    良い話だけでなく、きつい時期や失敗の話をしている会社は、入ったあとのギャップが小さくなりやすいと考えられます。

  3. 話す人の立場が違うか

    社長や人事だけでなく、入社 1〜3 年目の人や、転職して入った人の声があるかを見ます。

「動画で就職」では、「残業は実際どう?」「どんな人が働いてる?」のような知りたいことを入れると、働く人がその話をしている場面から動画を見られます。言葉が思いつかないときは、トップページの「流し見」で、1 社ずつ動画を見ていくこともできます。

動画で就職のトップページ。「知りたいこと・職種・会社名」を入れる検索欄と勤務地の選択があり、「残業は実際どう?」「未経験でも大丈夫?」と入れると働く人が答えている場面から見られると書かれている
図 4: 動画で就職では、知りたいことから、働く人が答えている場面を探せる(2026 年 10 月時点の画面)

動画で気になったことは、そのまま面接の逆質問にできます。「動画で、繁忙期は忙しいとお話しされていましたが、どのくらいの期間ですか」と聞けば、よく調べてきたことも伝わります。

そのまま使えるチェックリスト

気になる会社ごとに、次の表を埋めてみてください。「確かめられなかった」項目が多い会社ほど、もう一歩調べる価値があると考えると、比べやすくなります。

ブラック企業を見分けるチェックリスト(入る前)
確かめる場所チェック項目結果
求人票固定残業代がある場合、基本給・時間数と金額・超過分の支払いの 3 点が書かれている□ はい □ いいえ □ 該当なし
求人票時間外労働が「あり(月平均 15 時間)」のように数字で書かれている□ はい □ いいえ
求人票仕事の内容と就業場所の「変更の範囲」が書かれている□ はい □ いいえ
求人票年間休日の日数が書かれている□ はい □ いいえ
公的データしょくばらぼで残業・有給の数字を確認できた□ できた □ 載っていない
公的データ新卒採用者数と離職者数(直近 3 年)を確認できた□ できた □ 断られた
公的データ法令違反の公表事案に名前が載っていない□ 載っていない □ 載っている
数字離職率が、同じ規模・業種の平均と比べて大きく高くない□ 高くない □ 高い(理由: )
面接残業・休み・育て方の質問に、具体例で答えてくれた□ はい □ はぐらかされた
面接面接官によって、答えが大きく食い違わなかった□ はい □ いいえ
動画・声若手や転職者など、立場の違う人の話を見聞きできた□ はい □ いいえ
動画・声大変なことや失敗の話も聞けた□ はい □ いいえ

1 つでも「いいえ」があれば外す、という使い方はおすすめしません。小さな会社では、書類が整っていないだけのこともあります。気になった項目を面接で聞き、納得できる答えが返ってくるかで判断してください。

「入ってから違った」と思ったときの相談先

どれだけ確かめても、入ってから違和感を覚えることはあります。一人で抱え込まず、早めに外の窓口に相談してみてください。

各都道府県の労働局や労働基準監督署の中にある「総合労働相談コーナー」では、募集・採用、賃金の引き下げ、いじめ・嫌がらせなど、あらゆる労働問題の相談を、予約なし・無料で受け付けています[9]。求人票と実際の条件が違うときも、まずここで状況を話してみると、取れる手段が分かります。

次の会社を探すときは、この記事のチェックリストを、今度は「前の会社で何が合わなかったか」を書き出すところから使ってみてください。確かめるべき項目が、自分にとってよりはっきりするはずです。気になる会社が見つかったら、動画で就職のトップから、働く人の声を探してみてください。