ES の提出ボタンを押したあと、ふと手が止まる。志望動機の 3 行目は、ChatGPT が出した言い回しをそのまま使った。スマホで「ES AI バレる」と検索すると、「すぐバレる」「AI チェッカーで調べられる」という言葉が並んでいる。
先に書いておくと、ES に AI を使ったこと自体は、文章からはまず分かりません。分かったとしても、多くの企業は使ったこと自体を問題にしていません。企業に見抜かれるのは「AI を使った ES」ではなく、「あなたでなくても書ける ES」です。そして、それは文章よりも面接で分かります。
ES に AI を使うこと自体は、企業の 8 割以上が認めている
マイナビが 2026 年 6 月に企業に聞いた調査では、学生の就職活動での AI の使用について、「使い方を慎重に検討したうえで活用してほしい」が 76.6%、「積極的に活用してほしい」が 8.2% で、合わせて 84.8% でした。「就職活動には利用しない方がよい」は 9.0% で、年々減って 1 割を切っています[2]。
数値を表で見る
| 学生の就職活動での AI の使用について(企業) | 割合 |
|---|---|
| 使い方を慎重に検討したうえで活用してほしいと思う | 76.6% |
| 就職活動には利用しない方がよいと思う | 9.0% |
| 積極的に活用してほしいと思う | 8.2% |
学生の側も、もう使うのが普通です。2027 年卒の学生 1,258 人に聞いた同じマイナビの調査では、就活で AI を使った人は 84.9% で、使い道のいちばんは ES の推敲(71.8%)でした[1]。学情の調査では、2023 年卒から 3 年続けて「就活で大変だったこと」の 1 位だった「ES の自己 PR や志望動機の文章を完成させること」が、2027 年卒では 27.4% で 4 位に下がっています[3]。
丸ごと書かせている人は、思われているより少数です。HR 総研と就活会議の 2026 年 6 月の調査は、ES の「AI 丸写し」は 3% にとどまり、いちばん多い使い方は自分で書いたものの手直しだったと報告しています[5]。
ES に AI を使うとバレる? 文章だけでは、ほとんど見分けられない
「AI チェッカーで調べられる」という話は、あまり心配しなくて大丈夫です。ChatGPT を作った OpenAI 自身が、AI の書いた文章を見分けるツールを公開していましたが、2023 年 7 月に取り下げています。理由は精度の低さでした[6]。OpenAI が示していた評価では、このツールが「AI が書いた可能性が高い」と正しく判定できたのは AI の文章の 26% で、人が書いた文章の 9% を AI と間違えていました[6]。
人が書いた ES を 10 枚に 1 枚近く「AI」と判定してしまう道具では、それだけで合否を決めることはできません。
一方で、企業の側が AI で ES を読むことはあります。ソフトバンクは 2017 年に、新卒採用の ES の評価に IBM の AI(Watson)を使うと発表しました。AI が項目ごとに評価し、基準を満たした項目はそのまま通過、それ以外は人事担当者が中身を読んで合否を最終判断する仕組みです[7]。ここで AI が見ているのは「AI が書いたかどうか」ではなく、設問に対して何が書いてあるかです。
企業の側が AI をどんなルールで使っているかは、姉妹サイトの採用で生成 AI を使うときの社内ルールの記事にまとめています。合否は AI に決めさせず、人が理由を残す。多くの会社が目指しているのは、その形です。
ES で AI がバレるのは、だれでも書ける文章と、面接で続かない話
では、企業は何を見ているのか。マイナビの調査で、学生の AI 利用への対応として「ES の内容を精査する」と答えた企業は 15.4% で、その中身は「不自然な記述に注視する」「異なる学生で似た記述がないか」でした。いちばん多い対応は「面接での質問内容を工夫する(ES とは違う質問・深掘りの質問)」で、36.2% です[2]。HR 総研の 2026 年 6 月の企業調査でも、ES の作成での AI への対策を実施する意向がある企業は、大企業で 6 割を超えました[4]。
つまり見られているのは、AI の文章の癖そのものより、次の 2 つです。
1 つは、社名を入れ替えても通じてしまう文章です。同じ AI に同じ設問を聞けば、似た言い回しが返ってきます。何百枚も ES を読む人には、それが「似た記述」として目に付きます。
貴社の「挑戦を楽しむ」という企業理念に深く共感しました。私の強みである主体性と協調性を生かし、多様なお客様に寄り添いながら、社会に新しい価値を届けたいと考えています。
例: どの会社にも出せてしまう志望動機
悪い文章ではありません。でも、ここに書かれていることは、だれにでも書けます。理念のどこに、いつ、何があって共感したのか。主体性を示した場面はどれか。それが無いと、読む側は 2 行目で次の ES に移ります。
もう 1 つは、面接で ES の話が続かないことです。「この経験で、いちばん困ったのはいつでしたか」と聞かれたとき、AI が整えた言葉の裏に自分の記憶が無いと、答えはそこで止まります。学情の調査も、AI に頼りすぎて自分の経験や考えを言葉にできないと、面接などで評価を下げる可能性があると指摘しています[3]。深掘りの質問への備え方は、AI 面接の対策の記事に書いた「2 回目、3 回目のなぜ」が、そのまま人の面接にも使えます。
ES で AI に任せてよい所と、自分で書く所
線を引く場所は、「形」か「中身」かです。設問の読み解き、文章の組み立て、字数、誤字は AI に任せてかまいません。体験、数字、その会社を選ぶ理由は、自分で書きます。
| 作業 | AI に任せてよい所 | 自分で書く所 |
|---|---|---|
| 設問を読む | 設問が何を確かめたいのかを分解する | どのエピソードで答えるかを決める |
| 材料を集める | 思い出すための質問を出す | 質問に答える。数字・場面・そのときの気持ち |
| 組み立てる | 材料の並べ方(構成案)を出す | 下書き。下手でも自分の言葉で |
| 整える | 伝わりにくい所の指摘、字数合わせ、誤字の確認 | 直すかどうかの判断と、最後の言い回し |
| 志望動機 | 調べる観点を挙げる、業界の用語を説明する | 説明会や働く人の話で、自分が引っかかった場面 |
志望動機の材料だけは、AI の中にありません。AI はその会社で働いたことがないからです。説明会や OB・OG 訪問で聞いた言葉、働く人の話で印象に残った場面を、先に自分で集めておきます。動画で就職では、「残業は実際どう?」のような知りたいことから、働く人が答えている場面を探して見られます。動画を見るときに何をメモすればよいかは、社員インタビュー動画の見方にまとめました。
そのまま使える、ES のための 4 つのプロンプト
4 本とも、AI に ES を書かせないためのプロンプトです。ChatGPT でも Claude でも、無料版でも使えます。【 】の中を自分の内容に置き換えてください。自己分析や模擬面接のプロンプトは、就活 AI の使い方の記事にあります。
1. 設問が何を聞いているかを分解する
次の ES の設問について、
採用担当者が確かめたいことを
3 つに分けて説明してください。
・それぞれ、答えにどんな材料
(場面・数字・考え)があると
伝わるかも書く
・例文は書かない
設問:【設問を貼る(字数も)】
「学生時代に力を入れたこと」と「困難を乗り越えた経験」は、似ていて聞いていることが違います。設問ごとに、何を確かめたいのかを先に知っておくと、エピソード選びで外しません。
2. 自分のメモから、構成案だけを作ってもらう
次は、ES に書きたい経験の
箇条書きのメモです。
【メモを貼る】
このメモを使って、【字数】字の
ES の構成案を作ってください。
・段落ごとに「何を書くか」を
1 行で示すだけにする
・文章にしない
・メモに無い出来事や数字を足さない
・足りない材料があれば、
私への質問の形で最後に挙げる
構成案だけなら、文章を書くのは自分です。最後の「私への質問」が、ES を具体的にする材料を引き出してくれます。
3. 「だれでも書ける文」を指摘してもらう
次の ES を、何百枚も ES を読む
採用担当者の目で読んでください。
書き直しはせず、次の 2 つだけを
指摘してください。
1. 社名や名前を入れ替えても
ほかの学生が書けてしまう文
(そのまま引用する)
2. その文を私だけのものにするために、
足すとよい具体的な情報の種類
(例: いつ、何人、何が変わった)
【自分で書いた ES を貼る】
企業が見ている「似た記述」を、出す前に自分で見つけるための 1 本です。指摘された文には、数字か場面を 1 つ足すだけで、読む人の目が止まるようになります。
4. 提出前に、AI が足した言葉を見つける
【A】は私が最初に書いたメモ、
【B】は提出する ES です。
【B】の中で、【A】に無い出来事・数字・
気持ち・言い回しを、すべて
そのまま抜き出してください。
評価や書き直しはしないでください。
【A】【メモを貼る】
【B】【ES を貼る】
抜き出されたものが、面接で聞かれたときに自分の記憶で答えられるかを、1 つずつ確かめてください。答えられないものは、消すか、自分の体験に合う言葉に戻します。AI が気を利かせて足した「チームの士気が高まり」のような一言が、面接でいちばん困る場所になりがちです。
出す前に、入れない情報と、企業の注意書きを確かめる
最後に、使う前に確かめておくことが 2 つあります。AI に入れる情報と、応募する企業が AI の使用について何か書いていないかです。
AI に入れないもの
氏名・住所・電話番号・メールアドレス・学籍番号、友人や家族の情報は入れないでください。ES の材料には要りません。個人情報保護委員会は、入力した個人情報が AI の学習に使われ、正確または不正確な内容で出力されるおそれがあると注意しています[8]。AI の答えには不正確な内容が混ざることもあるので、企業の制度や数字は、公式の採用ページで確かめてください[8]。
募集要項や ES の注意書きに、AI の使用について書いている企業もあります。「使用しないでください」とあればそれに従い、「使った場合は使い方を書いてください」とあれば正直に書きます。書いていなければ、この記事の線引きで使ってかまいません。
面接で「ES に AI を使いましたか」と聞かれたら、隠さずに答えるほうが得です。「下書きは自分で書いて、伝わりにくい所の指摘と字数の調整に使いました」。そう言えるなら、それは道具の使い方を説明できる人だということです。私たちは、AI を使ったかどうかより、その説明ができるかどうかのほうが、ずっと見られていると考えています。


