月給 25 万円の求人が 2 つあっても、毎月の基本給も、1 年の休みの日数も、同じとは限りません。求人票の見方で差がつくのは、数字そのものより、その数字が何でできているかを読むところです。

月給は内訳を時給に直す。休日は数え方を見る。試用期間や賞与は「期間中」「実績」の条件まで読む。この 3 つだけで、入ってから「違った」と感じることの多くに、応募の前に気づけると私たちは考えています。手元に気になる求人票を 1 枚置いて、読み進めてみてください。

「求人票と違った」の申出は、賃金・時間・仕事内容の順に多い

ハローワークには毎年、「求人票に書いてあった条件と実際が違う」という申出が寄せられます。2024 年度は 3,297 件でした[1]。中身でいちばん多いのは賃金です。

賃金 20.2% 就業時間 14.4% 職種・仕事の内容 12.9% 選考方法・応募書類 10.2% 休日 7.0% 2024 年度の申出 3,297 件の内容(主なもの)。1 件で複数の内容はそれぞれ計上
求人票と違ったという申出で最も多いのは賃金。就業時間、仕事の内容が続く(厚生労働省、2024 年度[1])
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申出の内容件数割合
賃金に関すること929 件20.2%
就業時間に関すること661 件14.4%
職種・仕事の内容に関すること591 件12.9%
選考方法・応募書類に関すること470 件10.2%
休日に関すること320 件7.0%
雇用形態に関すること274 件6.0%

ここに出てくるのは窓口まで相談に来た人の分だけで、「こんなものか」と飲み込んだ人は数に入っていません。要因では「求人票の内容が実際と異なる」が 1,478 件と最も多く、読む側の誤解よりずっと多い結果でした[1]。書いた側の間違いもある以上、読む側は、数字をそのまま受け取らずに中身を確かめるほうが安全です。

月給は総額ではなく、内訳を時給に直して読む

求人票の「月給」や「計(税込)」は、基本給と手当を足した額です。ここから所得税や社会保険料が引かれるので、振り込まれる額はもっと少なくなります[2]。比べるときは総額ではなく、まず基本給がいくらかを見てください。賞与を「基本給の何か月分」で決める会社なら、基本給の額は賞与にも響きます。

手当の欄は、名前と一緒に支給の条件を見ます。営業手当・職務手当のように、名前だけでは何に対して払われるのか分からない手当もあります[2]。

固定残業代があれば、基本給を時給に直す

固定残業代(みなし残業代とも呼ばれます)とは、一定の時間分の残業代を、実際に残業したかどうかにかかわらず毎月決まった額で払う仕組みのことです。求人票には、固定残業代を除いた基本給、何時間分でいくらか、超えた分は追加で払うこと、の 3 つが書かれているはずです[3]。3 つがそろっているかの見方は、ブラック企業の見分け方の記事にまとめました。

そろっていたら、次は計算です。例として、こんな求人票で考えます。

月給 25 万円
 内訳: 基本給 19 万円 / 固定残業手当 6 万円(40 時間分。超えた分は追加で支給)
1 日 8 時間 / 年間休日 120 日

1 か月の平均の所定労働時間
 = (365 − 120)日 × 8 時間 ÷ 12 ≒ 163.3 時間
基本給を時給に直す
 = 190,000 円 ÷ 163.3 時間 ≒ 1,163 円

1,163 円は、2026 年度の地域別最低賃金の全国加重平均 1,177 円より低い額です[6]。最低賃金と比べるときは、固定残業代のような時間外の割増賃金や、通勤手当・家族手当・精皆勤手当を除き、月給を 1 か月の平均の所定労働時間で割って比べると決まっています[4][5]。最低賃金は都道府県で違い、2026 年度は 1,085 円から 1,280 円まで開きがあるので[6]、働く場所の額と比べてください。

「月給 25 万円」という数字だけを見ていると、この差にはまず気づきません。ほかに手当(住宅手当など、除かれないもの)があれば足して計算します。結果が最低賃金に近い、または下回るように見えたら、応募の前にハローワークか会社に、計算のもとになる時間と手当を確かめてください。

年間休日は何日が普通? 120 日と 105 日では月に 1 日以上ちがう

目安は、平均の 112.4 日と、会社の数でいちばん多い 120〜129 日です[7]。ただ、比べる前に数え方を知っておくと、数字の見え方が変わります。

年間休日とは、会社が決めた 1 年間の休日の合計のことです。土日・祝日・年末年始・夏季休暇などで会社の休みとされている日が入り、年次有給休暇は入りません[7]。有給は、ここに足して休める日です。

厚生労働省の 2025 年の調査では、平均は 1 企業あたり 112.4 日、働く人 1 人あたりでは 116.6 日で、どちらも 1985 年以降でいちばん多くなりました[7]。分布を見ると、120〜129 日の次に多いのは 100〜109 日です。

99 日以下 11.1% 100〜109 日 27.9% 110〜119 日 21.4% 120〜129 日 37.3% 130 日以上 2.0% 常用労働者 30 人以上の民営企業。2024 年 1 年間の年間休日総数
年間休日は 120〜129 日の会社が最も多いが、100〜109 日の会社も 4 社に 1 社を超える(厚生労働省 令和 7 年就労条件総合調査[7])
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年間休日総数企業の割合
69 日以下1.1%
70〜79 日1.8%
80〜89 日3.0%
90〜99 日5.2%
100〜109 日27.9%
110〜119 日21.4%
120〜129 日37.3%
130 日以上2.0%

グラフの「99 日以下」は、69 日以下から 90〜99 日までを足したもの。

120 日と 105 日の差は 1 年で 15 日、月にすると 1.25 日です。数字の並びには理由もあります。労働時間は原則として週 40 時間・1 日 8 時間までと決まっているので[9]、1 日 8 時間働く会社だと、計算上 105 日前後が年間休日の下限の目安になります(365 日 − 105 日 = 260 日、260 日 × 8 時間 = 2,080 時間で、週 40 時間の 1 年分とほぼ同じ)。土日が休みで祝日は出勤、という形がだいたいこの日数です。120 日前後は土日と祝日がおおむね休みになる日数で、年末年始や夏の休みが加わればさらに増えます。シフト制や変形労働時間制の会社はこの計算に当てはまらないので、日数そのもので比べてください。

「週休 2 日制」と「完全週休 2 日制」は別もの

完全週休 2 日制は、毎週 2 日の休みがある形です。ただの「週休 2 日制」は毎週とは限らず、2 日休める週が月 3 回・隔週・月 2 回・月 1 回といった形も含みます[7]。ハローワークの求人票では「週休二日制」の欄に、完全週休 2 日制なら「毎週」、それ以外なら「その他」と書かれます[2]。

2025 年の調査では、完全週休 2 日制の会社が 65.5%、それより休みが少ない週休 2 日制(月 3 回・隔週・月 2 回など)の会社が 27.1% でした[7]。「その他」と書いてあったら、月に何回かを確かめておくと、年間休日の数字とも突き合わせられます。

試用期間は、長さより期間中の条件を見る

試用期間とは、入社してから一定の期間、仕事への適性を見るために設ける期間のことです。求人票には「試用期間あり(3 か月)」のように書かれます[8]。3 か月か 6 か月かという長さより、見てほしいのはその期間の条件です。

厚生労働省の記載例には「月給 25 万円(ただし、試用期間中は月給 20 万円)」という書き方があります[8]。期間中に給与や雇用の形が変わる場合、ハローワークの求人票では補足事項の欄に書かれます[2]。「試用期間あり」の 1 行だけを見て、条件は同じだと思い込まないでください。

試用期間中でも、働き始めて 14 日を超えれば、会社が解雇するときに 30 日前の予告などの決まりが当てはまります[9]。試用期間だから何でも許される、というわけではありません。

有給・賞与・時間外の欄は、「制度」か「実績」かを見分ける

求人票の欄には、会社の決まり(制度)を書いた欄と、実際にどうだったか(実績)を書いた欄が混ざっています。ここを取り違えると、期待と実際がずれます。

  • 有給休暇: 入社時や 6 か月後の日数は、取れる日数です。実際に取った日数ではありません[2]。新卒向けの求人票なら、職場への定着の欄に有給の平均取得日数が載っていることがあります[2]。
  • 賞与・昇給: 制度と前年度の実績が書かれています。会社や本人の業績で変わることがあり、来年も同じとは限りません[2]。「年 2 回」は回数、「前年度実績 計 4.0 か月分」(例)は額の目安です。何の何か月分かも見てください。
  • 時間外: 「あり(月平均 20 時間)」のような数字は平均です。時期によって差があることがあるので、忙しい時期を聞いておくと安心です[2]。

平均取得日数や月平均の残業時間のような実績の数字は、制度の数字より実際の働き方に近い手がかりになります。載っていない場合も、新卒・既卒の人は会社に求めることができます。その求め方はブラック企業の見分け方の記事で書きました。

分からない欄は、応募の前に聞いていい

欄の意味が分からないとき、数字が合わないように見えるときは、応募の前に聞いてかまいません。ハローワークの求人なら窓口で確かめられ[2]、会社に直接聞くなら面接の最後の逆質問が使えます。聞くときは、決めつけずに事実を確かめる形にすると角が立ちません。

求人票に固定残業手当が 40 時間分とありました。最近の忙しい時期は、実際の残業がどのくらいだったか伺えますか。

例: 固定残業代のある求人で、面接の最後に聞く場合

面接で聞くときの言い方は、面接の逆質問の記事に 30 個並べています。手元の求人票は、次の表に沿って 1 欄ずつ見ていくと、聞くことが自然に決まります。

応募前に求人票で確かめる欄
求人票の欄見落としやすい点確かめ方
賃金・手当総額に固定残業代や手当が入っている。額面から税・保険料が引かれる基本給を時給に直し、働く場所の最低賃金と比べる
時間外「月平均」は 1 年の平均。忙しい時期は多い忙しい月と、そのときの残業を聞く
休日「週休 2 日制」は毎週とは限らない。年間休日に有給は入らない週休二日制の欄が「毎週」か「その他」かを見る
試用期間期間中だけ給与や雇用の形が違うことがある補足事項の欄を読む。無ければ「期間中の条件は同じか」を聞く
有給・賞与有給は取れる日数、賞与は前年度の実績平均取得日数と、賞与の計算のもと(何の何か月分か)を聞く
業務・就業場所入社直後だけでなく、将来変わる範囲がある「変更の範囲」の欄を読み、異動・転勤した人の例を聞く

求人票の下書きを生成 AI で作る会社も出てきています。採用する側が AI で書いた求人票の何を人が確かめるべきかは、姉妹サイトの求人票の書き方と AI での作成の記事にあります。書く側が気をつけている欄は、そのまま読む側が見るべき欄でもあります。

求人票の欄に書けるのは、平均や制度までです。忙しい月の職場の様子や、試用期間中にどんなふうに教わるのかは、働いている人の言葉のほうがよく分かります。動画で就職では、「残業は実際どう?」のような問いから、働く人が答えている場面を探して見られます。求人票で数字を確かめ、その中身を動画で確かめる。2 つを並べると、応募する前に分かることがぐっと増えます。