日曜の夜、明日の準備をしながらスマホで「新卒 辞めたい」と打つ。検索結果には「甘え」という言葉と、「今すぐ辞めていい」という言葉が両方並んでいて、どちらを信じればいいのか分からない。

先に書いておくと、1 年目に辞めたいと思うこと自体は、珍しくありません。辞めるかどうかは、気持ちの強さではなく、順番に確かめて決められます。体と心が持つか。そのつらさは時間や社内で変わるものか。辞めたあとのお金と次の仕事をどうするか。ただし、体を壊しそうなときや、ハラスメントがあるときは、この順番を飛ばして離れてかまいません。

新卒 1 年目で辞めたいのは甘え? 入社半年で 6 割が転職を考えている

2025 年に大学・大学院を卒業して就職した人に、入社半年の時点で聞いた調査では、転職を考えている人は 59.7% でした[1]。勤め先に満足している人は、就職活動のときの 91.2% から、入社半年後には 78.0% まで下がっています[1]。入社前に思っていたより悪かったこととして、いちばん多く挙がったのは仕事内容(25.7%)です。

ただ、同じ 59.7% の中身を見ると、「1 年以内の転職を考えている」は 5.4%、「3 年以内」が 13.4% で、いちばん多いのは「いつかはイメージできていないが、いずれ転職したい」の 30.4% でした[1]。辞めたい、転職したいと思うことと、実際に動くことの間には、かなりの距離があります。

実際に 1 年目で辞める人もいます。2022 年 3 月に大学を出て就職した人のうち、1 年目に辞めた人は 12.1% でした[2]。8 人に 1 人くらいです。辞めたいと思う人のほうがずっと多く、辞める人も少なくない。どちらの数字も、あなたがおかしいわけではないことを示しています。

眠れない日が続いているなら、辞めるかどうかより先に休む

辞めるかどうかを考える前に、1 つだけ確かめてください。眠れない、朝どうしても起きられない、食事の味がしない、休みの日も仕事のことが頭から離れない。こうした状態が何日も続いているなら、それは考え方の問題ではなく、体と心が限界に近いというサインかもしれません。

その状態で、辞めるか続けるかという大きな決断をするのは、とても難しいことです。先に休んでください。会社に産業医や保健師がいれば相談でき、いなければ心療内科などの病院にかかれます。医師の判断で、辞める前に休職するという道もあります。

誰にも話せないときは

厚生労働省の「こころの耳」には、働く人と家族のための電話相談があります。平日は 17 時〜22 時、土日は 10 時〜16 時に受け付けています(祝日・年末年始を除く)[4]。SNS やメールの相談もあります。今すぐ危ないと感じるときは、迷わず 119 番や近くの人に助けを求めてください。

新卒 1 年目の「辞めたい」は、人と仕事と時間に寄りやすい

初めての会社を辞めた若者に、辞めた理由を 3 つまで聞いた厚生労働省の調査があります[3]。勤めた期間が 3 か月未満の人に絞ると、理由の上位はこうなります。

人間関係 52.3% 仕事が自分に合わない 42.1% 労働時間・休日・休暇 40.8% 賃金の条件 22.4% 健康上の理由 16.1% 勤めた期間が 3 か月未満で辞めた人(3 つまで回答)
3 か月未満で辞めた人の理由は、人間関係・仕事の中身・働く時間が上位。給与はその次(厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」[3])
数値を表で見る
辞めた理由3 か月未満6 か月〜1 年未満
人間関係がよくなかった52.3%37.4%
仕事が自分に合わない42.1%34.6%
労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった40.8%32.4%
賃金の条件がよくなかった22.4%15.2%
健康上の理由16.1%12.9%

6 か月〜1 年未満で辞めた人でも、上の 3 つの順番は変わりません(人間関係 37.4%、仕事が合わない 34.6%、労働時間など 32.4%)[3]。1 年目のつらさは、多くが「人」「仕事」「時間」のどれか、またはその組み合わせです。

自分の「辞めたい」がどれに近いかを、一度言葉にしてみてください。「上司に毎日きつく言われる」なら人、「電話営業がどうしても合わない」なら仕事、「毎日 22 時まで帰れない」なら時間。分けられると、次の節で、変わる見込みがあるかを考えられます。

そのつらさが、時間や社内で変わるものか、会社を変えないと変わらないものかを分ける

1 年目のつらさには、時間がたつと軽くなるものと、いくら待っても変わらないものが混ざっています。研修が終わる、仕事を覚える、担当が替わる、異動する。それで変わるなら、辞める以外の手があります。逆に、会社のやり方そのものから来ているなら、待っても変わりにくい。

つらさが変わる見込みを確かめる
つらさ変わりうる例 / 変わりにくい例確かめ方
人変わりうる: 特定の上司・先輩との相性。部署が替われば離れる
変わりにくい: 部署を問わず、怒鳴る・無視するのが当たり前になっている
他の部署の同期に、そちらの雰囲気を聞く
仕事変わりうる: 研修中・下積みの仕事。2 年目以降に任される仕事が違う
変わりにくい: この会社にいる限り、ずっと同じ種類の仕事が続く
2〜3 年目の先輩が今どんな仕事をしているかを聞く
時間変わりうる: 繁忙期だけ残業が増える。人が入れば落ち着く予定がある
変わりにくい: 1 年中この働き方で、先輩も同じ
先輩の帰る時間と、去年の同じ時期の様子を聞く
お金変わりうる: 評価や昇給の時期が来れば上がる仕組みがある
変わりにくい: 何年いても上がり方が小さい
給与規程や、数年上の先輩の話で確かめる

もう 1 つ見ておきたいのは、それが「この会社」のつらさなのか、「この仕事」のつらさなのかです。同じ職種の 1 年目が、ほかの会社でもやはり同じことに苦労しているなら、会社を変えても同じことが起きるかもしれません。動画で就職では「大変なことは?」「1 年目は何をする?」といった問いから、いろいろな会社で働く人がその話をしている場面を探せます。ほかの会社の 1 年目の話を聞いてみると、自分のつらさがどちらから来ているかの手がかりになります。

会社の側でも、入社して最初の 3 か月にどう受け入れるかで、新人が辞めるかどうかに差が出ることが分かってきています。会社が何を用意しているはずなのかは、姉妹サイトの企業向けの早期離職対策の記事に書きました。自分の職場に何が足りないのかを言葉にする手がかりになります。

相談先は、話したいことで選ぶ

相談先は 1 つに決めなくてかまいません。気持ちを聞いてほしいのか、社内で何かを変えてほしいのか、体のことなのか、会社の扱いが法律に合っているかなのか。話したいことによって、向いている相手が違います。

話したいことと、向いている相談先
相談先向いている話知っておきたいこと
家族・友人気持ちを聞いてほしい。頭の中を整理したい会社の中のことは知らないので、決める材料は自分で集める
上司以外の先輩・人事異動、担当替え、仕事の量を変えてほしい何を変えてほしいかを 1 つ決めてから話すと伝わりやすい
産業医・保健師・病院眠れない、体調が悪い、休みたい会社に産業医がいなければ、心療内科などにかかれる
こころの耳(厚生労働省)誰にも言えないつらさ、心の不調電話は平日 17〜22 時、土日 10〜16 時[4]
総合労働相談コーナーハラスメント、残業代、辞めさせてもらえない全国の労働局などにあり、無料・予約不要。面談か電話で相談できる[5]
転職エージェント次の仕事の探し方、求人の相場次の仕事を紹介するのが仕事なので、辞めるかどうかは自分で決める

ChatGPT や Claude のような生成 AI に、もやもやを聞いてもらう人も増えています。頭の整理には役立ちますが、会社名や上司の名前は入れないでください。辞めるかどうかの結論は、AI に決めさせず、自分で出します。

ハラスメントや法律に反する扱いがあるなら、すぐ離れてよい

ここまでの「時間で変わるか」を考えなくていい場合があります。殴る・怒鳴る・人格を否定するといったハラスメントが続いている、残業代が払われない、入社前に示された労働条件と実際がまるで違う。こうした場合は、慣れるのを待つ理由がありません。

総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせ・パワーハラスメントを含む職場のトラブルの相談を、無料・予約なしで受けています[5]。法律違反の疑いがあれば、労働基準監督署など権限のある部署に取り次いでもらえます。求人票や職場の数字で会社を見分ける方法は、ブラック企業の見分け方の記事にまとめています。

辞めると伝えても、強く引き止められることがあります。正社員のように雇用期間の定めがない働き方なら、辞めると申し出てから 2 週間で契約を終えられると民法で決まっていて、これは月給制でも同じです[6]。会社の許可が要るわけではありません。就業規則に「1 か月前に申し出る」などと書かれていることもあるので、引き継ぎのために話し合う余地はありますが、引き止められ続けて辞められない、ということにはなりません。

辞めると決めたら、お金と次の仕事の順番を先に決める

辞めると決めたら、退職届を出す前に、お金のことを確かめてください。1 年目で辞める人がいちばん驚きやすいのは、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)です。

自分の都合で辞めた場合、基本手当を受け取るには、辞める日までの 2 年間に、雇用保険に入っていた期間が通算 12 か月以上必要です[7]。新卒で入った会社を 1 年たたずに辞めると、この 12 か月に届かないことが多く、その場合は受け取れません。会社の倒産・解雇や、ハローワークが認める正当な理由で辞めた場合は、1 年間に 6 か月以上で足りることがあります[7]。

受け取れる場合でも、正当な理由のない自己都合の退職だと、手続きのあと 7 日間の待期に加えて、1〜3 か月は支給されません[8]。辞めてから次の給料が入るまで、数か月は貯金で暮らす前提で考えておくと安心です。体調に問題がないなら、働きながら次の仕事を探し始めるほうが、お金の不安に押されて急いで決めずに済みます。

決める前に、下のメモを埋めてみてください。全部埋まらなくてもかまいません。埋まらない欄が、次に確かめることです。

【辞める前の確認メモ】

1. 体と心
   ・眠れない、朝起きられない日が続いていないか
   ・続いているなら、先に休む・医師に話す

2. つらさ
   ・いちばんつらいのは(人 / 仕事 / 時間 / お金)
   ・それは時間や異動で変わりそうか
   ・ほかの会社の同じ職種でも起きることか

3. 相談したか
   ・社内(上司以外の先輩・人事)に話したか
   ・ハラスメントや法律に反する扱いなら、
     総合労働相談コーナーに相談したか

4. お金
   ・雇用保険に入っていた期間は通算何か月か
   ・次の給料まで、何か月暮らせる貯金があるか

5. 次
   ・次の仕事で、今と同じことが起きないと
     言える理由は何か

最後の欄が、いちばん埋めにくいはずです。次の会社で同じつらさを繰り返さないための確かめ方は、第二新卒の転職で 1 社目と同じミスマッチを繰り返さないための記事に書きました。辞めると決めたあとは、そちらが続きになります。