スマートフォンを本の山に立てかけて、録画のボタンを押す。画面に映った自分の顔を見たとたん、考えてきた言葉がどこかへ行ってしまう。録画面接(動画面接)のコツを調べ始めるのは、たいていこの 1 回目のあとです。

先にひとことで言っておくと、録画面接で大事なのは、映像をきれいに撮ることより、答えの中身を 1〜2 分に組み立てて、話し終えたら止まることです。撮り直しに 2 時間かけるより、撮る前の準備に 30 分かけたほうが、結果につながりやすいと私たちは考えています。

録画面接を受けた学生の 8 割以上が、苦手だと感じている

録画面接とは、会社から届いた質問に、自分の都合のよい時間に答えを録画して送る選考のことです。会社の人は、届いた動画をあとから見て評価します。動画面接、オンデマンド面接とも呼ばれます。録画を AI が分析する場合もあり、AI が質問してくる対話型の AI 面接の準備はAI面接の対策にまとめています。

苦手だと感じるのは、ふつうのことです。マイナビが 2023 年卒の学生に聞いた 2022 年 6 月の調査では、録画面接を受けた学生のうち 83.2% が「苦手」「どちらかといえば苦手」と答えました[1]。少し前の調査ですが、録画面接について学生に詳しく聞いた調査はこれが新しいほうです。苦手な理由の上位は、次のとおりでした。

何度も撮り直した 54.2% ひとりで話すのが苦手 53.7% 手ごたえがない 50.2% 話し方が単調になる 43.1% 録画されることに抵抗 42.5% 録画面接が苦手な学生 254 人(複数回答、上位 5 つ)
苦手の上位 3 つは、話す中身ではなく「ひとりで撮る」ことそのもの(マイナビ 2023 年卒 学生就職モニター調査、2022 年 6 月[1])
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特に録画形式の WEB 面接について苦手だと感じる点割合
何度も撮り直さないといけなくなった54.2%
相手がいない状況でひとりで話すのが苦手53.7%
うまくいったかどうかの手ごたえがない50.2%
話し方が単調になってしまう43.1%
自分の話す様子を録画することに抵抗がある42.5%
相手の反応に合わせて話すことができない42.0%
制限時間以内で話をまとめられない30.9%

上の 3 つは、どれも話す中身の問題ではありません。ひとりで撮るという形に慣れていないことから来ています。形に慣れる方法はあるので、この記事の後半で順に書きます。

見られているのは、映像のきれいさより、質問への答えの中身

録画面接のよいところは、全員が同じ質問に同じ条件で答えることです。採用の研究では、全員に同じ質問をして、決めた基準で採点する面接(構造化面接)が、入社後の仕事ぶりを予測する力がいちばん高いとされています[4]。録画面接は、この考え方を取り入れやすい形です。設問ごとに「何を見るか」の基準を決めておけば、全員の答えを同じ物差しで比べられるからです。

採用担当向けの姉妹サイトでは、会社が録画面接の設問と評価シートをどう作るかを書きました。そこで例に挙げた評価シートが見ているのも、質問に答えているか、自分のしたことを具体的に話せているか、といった中身です。服装・背景・撮る機器は評価しないと案内に書くことも、すすめています。会社の側の作り方を知っておくと、何に時間をかければいいかが見えてきます。

もちろん、声が聞き取れない、顔が暗くて見えないと、中身も伝わりません。撮り方は、そこを外さない程度に整えれば十分です。

撮る前に、案内で確かめておくこと

録画面接の条件は、会社やサービスによってかなり違います。11 か国の応募者 27,809 人の録画面接を調べた研究でも、答える前の準備時間、撮り直しができるか、設問の数は会社ごとにばらばらで、その違いで受けた人の感じ方も変わっていました[2]。案内のメールや最初の画面には、たいてい条件が書いてあります。撮り始める前に、次の項目を確かめてください。

【録画面接の案内で確かめること】
□ 提出の期限(日付と時刻)。期限の前日までに出すつもりで予定を組む
□ 設問の数と、1 問の回答時間の上限
□ 設問は、録画を始める前に読めるか。読んでから考える時間は何秒か
□ 撮り直しはできるか。できるなら何回までか
□ スマートフォンとパソコンのどちらで撮るか。画面の向き(縦・横)の指定
□ アプリを入れるか、ブラウザで撮るか。動画をアップロードする場合はファイルの形式と大きさ
□ 服装の指定(「服装自由」「私服で」など)
□ 録画をだれが見るか(人か、AI の分析もあるか)と、録画をいつまで保存するか
□ 分からないことがあったときの問い合わせ先

案内に書いていないことは、問い合わせてかまいません。「撮り直しは何回までできますか」「縦向きと横向きのどちらで撮ればよいですか」と聞くのは、準備をしている証拠です。期限の当日は、通信や機器のトラブルが起きても取り返せないので、前日までに出し終えるつもりで予定を組んでください。

撮り方は、目線・光・音を整えれば足りる

撮る環境は、10 分あれば整います。大事なのは、顔がはっきり見えて、声がはっきり聞こえることです。

録画面接の撮り方
やることよくある失敗
目線カメラを目の高さに置き、レンズを見て話す。画面の自分の顔は見ない机に置いたスマートフォンを見下ろし、あごの下から映る
光窓や照明を顔の正面に。夜は部屋の明かりに加えて、机の明かりを顔に向ける窓を背にして、顔が暗くなる
音静かな部屋で、窓を閉める。通知を切る。イヤホンのマイクは、使う前に 1 回録って聞き比べるエアコンや外の音で、声が聞き取りにくい
画面頭の上に少し余白を残し、胸のあたりまで入れる。白っぽい壁やカーテンを背にする顔が画面の下のほうにあり、天井が大きく映る
服装指定があればそのとおり。「服装自由」なら、会社説明会に着ていく服を目安に上だけ整えて、立ち上がったときに映る

スマートフォンで撮るなら、本や箱を重ねて目の高さに立て、画面の向きは案内の指定に合わせます。指定が無ければ、問い合わせるのがいちばん確かです。撮り始める前に、1 問目と同じくらいの長さで試しに撮って見返すと、光と音の失敗はほとんど防げます。

1 問は「結論・場面・これから」で組み立て、話し終えたら止まる

録画面接でいちばん差がつくのは、1 問の答えの長さと組み立てです。回答時間の上限を 1 分・3 分・5 分で比べた研究では、成績は 3 分のときがいちばん高くなりました[3]。この研究の範囲では、短すぎても長すぎても成績は下がりました。同じ研究では、話し終えたあとも付け足して話し続ける答えがよく見られ、付け足しまで含めると、最初に話し終えたところまでより評価が下がっていました[3]。

だから、時間の上限まで話す必要はありません。上限の半分から 3 分の 2 くらいで、言いたいことを言い切って止まるのが目安です。組み立ては次の 3 つで足ります。

  1. 結論

    質問への答えを、最初の 1 文で言う。「私が学生時代に力を入れたのは、飲食店のアルバイトで新人の教え方を変えたことです。」

  2. 場面

    そのとき、何があって、自分が何をしたかを 1 つだけ。数や期間を入れると具体的になる。

  3. これから

    その経験が、この会社の仕事でどう生きるかを 1 文で。最後に「以上です」と言って止まる。

自己紹介を求められたときの例です。1 分ほどで話し終わる長さにしています。

(大学名)経済学部 3 年の、(名前)です。大学では地域の商店街のゼミに入り、空き店舗を使ったイベントの集客を担当しました。最初の回は 30 人しか来ませんでしたが、来た人に聞き取りをして告知の方法を変え、3 回目には 120 人になりました。人の話を聞いて、やり方を変えていくことが得意です。御社でも、お客様の声を聞きながら提案を変えていける営業になりたいと考えています。以上です。よろしくお願いします。

例: 新卒の一次選考で、自己紹介を 1 分で求められた場合(内容は架空)

締めの言葉は「以上です。よろしくお願いします」くらいで十分です。言い終えたら 2 秒ほどカメラを見たまま止まり、それから録画を止めます。最後に慌てて手を伸ばす姿が映ると、もったいない終わり方になります。

カンペ(原稿)を画面の近くに貼る人もいますが、原稿を読むと目線が動き、話し方も単調になります。単調になるのは、苦手な点の 4 位でもありました[1]。手元に置くのは、結論・場面・これからの単語だけのメモにしておくと、目線を保ったまま話の筋を外さずにすみます。

よく聞かれるのは、自己紹介・学生時代に打ち込んだこと・志望理由

何を聞かれるかは会社によって違いますが、準備する質問はかなり絞れます。同じマイナビの調査で、面接(録画に限らない)でよく聞かれた質問を見ると、上位は次の 5 つでした[1]。

自己紹介・自己PR 76.5% 学生時代に打ち込んだこと 73.6% その会社の志望理由 67.5% 長所・短所 61.9% 他社の選考状況 56.4% 面接を受けた学生 1,750 人(複数回答、上位 5 つ)
面接でよく聞かれる質問の上位 3 つを準備しておけば、録画面接の多くの設問に対応できる(マイナビ 2023 年卒 学生就職モニター調査、2022 年 6 月[1])
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よく聞かれた質問割合
自己紹介、自己PR76.5%
学生時代に打ち込んだこと73.6%
その会社を志望した理由67.5%
自分の長所、短所61.9%
就職活動の進捗状況・他社の選考状況56.4%
この業界を志望した理由53.7%

他社の選考状況は、聞かれたら事実を短く答えれば足ります。録画面接では、上の 3 つに長所・短所を加えた 4 つを、それぞれ 1〜2 分で話せるようにしておくと、多くの設問に対応できます。転職やアルバイトの録画面接なら、「学生時代に打ち込んだこと」を「これまでの仕事で工夫したこと」や「働ける曜日と時間」に置き換えてください。

4 つのうち、録画で差がつきやすいのは志望理由です。ほかの 3 つは自分の話なので、どの会社にも同じ答えが使えます。志望理由だけは、その会社の具体的な何かに触れないと、だれでも言える答えになります。会社のサイトや説明会のほかに、働いている人が話している動画を見ておくと、「動画で先輩社員が話していた、入社 1 年目から担当を持てるところに惹かれました」のように、場面のある志望理由になります。動画で就職では、「1 年目は何をする?」のような知りたいことから、働く人が答えている場面を探して見られます。

録画面接では、会社に質問する時間がありません。分からないことは、次の面接の逆質問のためにメモしておいてください。

撮り直しは 2〜3 回までと決めておく

苦手な理由の 1 位が「何度も撮り直さないといけなくなった」だったのは、偶然ではないと思います。撮るたびに小さな失敗が気になり、直すたびに表情が硬くなる。撮り直しに上限が無いと、終わりが見えなくなります。

撮り直しができる場合も、撮る前に「この質問は 3 回まで」と決めておき、3 回目までのいちばんよいものを出してください。言葉に一度詰まっても、すぐ言い直して最後まで話し切れていれば、出してかまいません。撮り直しができない場合に言葉が飛んだら、「失礼しました、言い直します」と言って、結論の 1 文からもう一度始めれば十分です。黙って時間が過ぎるより、ずっと伝わります。

練習は、スマートフォンで自分を 1 回撮って見返すのがいちばん効きます。見返すのがつらければ、音だけ聞いても、話の長さと口ぐせが分かります。生成 AI に面接官の役をさせて練習することもできます。

あなたは、新卒採用の録画面接の面接官です。
私が録画面接で受ける質問を、1 問ずつ出してください。
質問は「自己紹介」「学生時代に打ち込んだこと」「志望理由」「長所と短所」の 4 つです。
志望する会社: (会社名と仕事の内容を 2〜3 行で)

私が答えを文字で書いたら、次の 3 点だけを短く指摘してください。
1. 最初の 1 文で、質問に答えているか
2. 具体的な場面(何があって、私が何をしたか)が 1 つ入っているか
3. 声に出して 2 分以内に収まる長さか(長ければ、削れる文を示す)
答えを書き直したり、例文を作ったりはしないでください。

AI に答えを作らせると、どこかで聞いたような話し方になり、録画で話すと自分の言葉に聞こえません。直してもらうのは組み立てと長さだけにして、言葉は自分で選んでください。AI を就活で使うときの注意は就活 AI の使い方に書いています。