「前の会社を辞めた理由を教えてください」。転職の面接で、ほぼ必ず聞かれる退職理由の質問です。本当の理由は上司との関係だった。でも、それをそのまま言うと悪口に聞こえそうで、かといって「スキルアップのため」と言うのも、どこかうそっぽい。
先に答えを書いておくと、面接で退職理由を聞かれたときに、本音を隠す必要も、きれいな言葉で飾る必要もありません。面接官が知りたいのは、あなたが前の会社で何に困ったかより、「同じ理由で、うちもすぐ辞めないか」です。事実は変えずに、話す範囲と順番を選び、応募先ではそれが起きないと確かめた理由までつなげて話せば足ります。
面接官が退職理由で確かめたいのは、同じ理由でまた辞めないか
私たちは姉妹サイトの「動画で採用」で、採用する会社に向けた記事を書いてきました。会社の側から見ると、中途で採った人が 1 年たたずに辞めるのは、求人の費用も、教えた時間も、職場の人の負担も無駄になる、いちばん避けたいことです。退職理由の質問は、そのための確認です。
面接官が答えを聞きながら考えているのは、だいたい次の 3 つです。
- 前の会社で起きたことが、うちでも起きそうか(残業が嫌で辞めた人に、残業の多い部署を任せることにならないか)
- 困ったときに、自分で何か手を打とうとする人か
- 前の会社や人を、一方的に悪く言う人ではないか
採用選考は、応募した人の適性と能力が、その仕事をこなせるかどうかを基準にして行うものとされています[3]。退職理由は、応募した仕事を続けられるかに関わることなので、聞かれるのは普通のことです。面接官の側にも聞いてはいけないことの決まりがあり、その中身は姉妹サイトの企業向けの「面接で聞いてはいけない質問」にまとめています。
本音の退職理由は、人間関係・労働時間・給料が多い
言いにくい理由で辞めた人は、少なくありません。厚生労働省の 2024 年の雇用動向調査で、転職した 25〜29 歳が前の会社を辞めた理由を見ると、上位には給料、労働時間・休日、人間関係が並びます[1]。
数値を表で見る
| 前の会社を辞めた理由(25〜29 歳) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 給料等収入が少なかった | 16.9% | 7.9% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 9.8% | 15.2% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 11.5% | 14.0% |
| 会社の将来が不安だった | 8.1% | 5.0% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 5.6% | 4.8% |
そして、こうした本音は、辞めるときの会社にも伝えられていないことが多いようです。エンが 2024 年に退職経験のある 4,658 人に聞いた調査では、会社に伝えなかった本当の退職理由がある人は 54% でした[2]。伝えなかった本当の理由の 1 位は「人間関係が悪い」(46%)で、会社に伝えた理由の 1 位は「別の職種にチャレンジしたい」(22%)です[2]。
辞める会社に建前を言うのは、円満に辞めるためなら分かります。ただ、次の会社の面接で同じ建前を使うと、困ったことになります。「別の職種に挑戦したい」と言ったのに応募したのが同じ職種なら、面接官は必ずそこを聞いてきます。
言い換えとうその境目は、事実を変えるかどうか
「ネガティブな理由はポジティブに言い換える」とよく言われます。間違いではありませんが、やりすぎると、うそとの区別がつかなくなります。境目は、事実を変えているかどうかです。
- うそ: 残業が月 80 時間あって辞めたのに、「新しい分野に挑戦したくて」とだけ言う。人間関係で辞めたのに、「家庭の事情で」と言う
- 言い換え: 残業が多かったことは言う。そのうえで、上司の悪口ではなく「仕事の量を自分で調整できない働き方だった」と、起きたことを話す範囲を選ぶ
うそが困るのは、ばれるかどうかより、話が続かなくなるからです。面接官は 1 つ答えると、必ず「具体的には?」「そのとき何をしましたか?」と重ねて聞いてきます。作った理由には、その先の具体的な話がありません。入社できたとしても、「残業は気にならない人」として採られれば、また同じ働き方の部署に入ることになります。本音を言わないことが、そのまま次のミスマッチにつながります。
前の会社に解雇された場合も、ごまかさないでください。労働基準法では、辞めた人が求めれば、会社は退職の理由(解雇ならその理由)を書いた証明書を出すことになっていて、証明書には本人が求めていないことを書いてはいけないとされています[4]。応募先から退職の事情を確かめられる場面もあるので、事実どおりに、短く話すほうが安全です。
退職理由は「辞めた理由 → 自分で試したこと → 応募先で確かめたこと」の順に 1 分で話す
面接で退職理由に使える時間は、最初の答えで 1 分ほどです。長く話すほど、不満を並べているように聞こえます。次の 3 つを、1〜2 文ずつにしてください。
- 辞めた理由: 何が合わなかったかを、事実で 1〜2 文
- 自分で試したこと: 辞める前に、社内で何か手を打ったか(相談した、異動を願い出た、やり方を変えた)
- 応募先で確かめたこと: その理由が、応募先では起きないと考えた根拠
2 つ目があると、「困ったら黙って辞める人ではない」ことが伝わります。3 つ目があると、退職理由がそのまま志望動機になります。下の 2 つは書き方の例で、実在の人の話ではありません。
前職では、繁忙期は月 60 時間ほどの残業が続いていました。上司に相談して担当を減らしてもらいましたが、人が足りず、半年でまた元に戻りました。御社は面接の前にいただいた資料で、前年度の月平均の残業が 15 時間と伺い、カジュアル面談でも繁忙期の働き方を確かめました。長く腰を据えて、今の経験を生かしたいと考えています。
例: 残業が多くて辞めた場合
前職は、仕事の進め方を一人で決めて、結果だけを報告する働き方でした。自分から週 1 回の相談の時間をお願いしましたが、なかなか続きませんでした。チームで進捗を確かめながら進めるほうが力を出せると気づいたので、毎朝チームで打ち合わせをしている御社の働き方に惹かれました。
例: 上司・職場の人との関係で辞めた場合
3 つ目の「確かめたこと」は、面接の前に用意しておく必要があります。社員の話や、面接の逆質問で確かめる方法は逆質問の記事に、1 社目のつまずきを次で繰り返さないための会社選びは第二新卒の転職の記事に書きました。応募先の残業や休みについて、働く人が自分の言葉で答えている場面を見ておくと、「確かめたこと」に具体的な中身が入ります。
本音別の言い換え例と、深掘りされやすい質問
よくある本音ごとに、言い換えの例と、そのあと聞かれやすい質問を並べました。言い換えの例は、そのまま使うより、自分の事実に置き換えて使ってください。
| 本音 | 言い換えの例 | 深掘りされやすい質問 |
|---|---|---|
| 上司と合わない | 指示が都度変わり、仕事の進め方を相談できる場が無かった | あなたの側で変えられたことは? |
| 残業が多い | 繁忙期に月 60 時間の残業が続き、担当を減らしても戻ってしまった | うちも繁忙期は残業がありますが? |
| 給料が安い | 成果が評価や給与に反映される仕組みが無く、3 年同じ額だった | 希望の年収と、その根拠は? |
| 仕事が合わない | 新規の営業より、契約後のお客様を支える場面で力が出ると分かった | なぜ社内で異動しなかった? |
| 会社の将来が不安 | 主力の事業が縮み、2 年続けて人が減った | うちの事業の何を見て応募した? |
表の右の列に、答えを 1 文ずつ用意しておくと、本番で詰まりません。とくに「うちも同じことがありますが?」と聞かれたときは、慌てて「大丈夫です」と言わず、どこまでなら続けられるかを正直に話してください。そこで合わないと分かれば、入社してから分かるよりずっとよい結果です。
ハラスメントで辞めた場合は、「〜という扱いを受け、社内の窓口にも相談しましたが変わらなかったため退職しました」と、事実だけを短く話します。相手を責める言葉を足さなくても、事実で十分に伝わります。
体調不良・会社都合・短い在籍は、隠さず短く話す
言いにくさの種類が違う理由もあります。どれも、隠すより、短く事実を言って、今の状態と次の話に移るほうが、面接官は安心します。
- 体調不良: 病名や経過まで話す必要はありません。「体調を崩して退職し、治療して今は働ける状態です」と、今を中心に話す。配慮してほしいことがあれば具体的に
- 会社都合(倒産・事業の縮小・解雇): 起きたことを 1 文で。自分に原因がある解雇なら、何を学んで次にどう変えるかまで
- 在籍が 1 年未満: 短さは書類で分かっているので、言い訳を重ねない。「入る前に何を確かめなかったか」と「今回は何を確かめたか」を話す
- 家族の事情(介護・転居など): 「家族の事情で勤務地を変える必要がありました」で足ります。家族の様子を細かく聞かれたら、答えなくてかまいません(返し方は不適切な質問への答え方の記事)
話す前に、下のメモを埋めてみてください。埋まらない欄があれば、そこが面接の前に確かめることです。
【退職理由を 1 分で話すためのメモ】
1. 辞めた理由(事実で 1〜2 文)
・何が合わなかった?(人 / 仕事 / 時間 / 給料 / 会社)
・数字や場面で言えること(残業 月◯時間 など)
2. 自分で試したこと
・辞める前に、誰に何を相談した?
・変わったこと、変わらなかったこと
3. 応募先で確かめたこと
・同じことが起きないと考えた根拠
・どこで確かめた?(求人票 / 面談 / 社員の話 / 動画)
4. 深掘りへの備え
・「あなたの側で変えられたことは?」への答え
・「うちも同じことがありますが?」への答え


